本の海

書籍や読書に関する情報を紹介します

書評 『アート×テクノロジーの時代 社会を変革するクリエイティブ・ビジネス』

友人に薦められて手に取った本書ですが、個人的に非常に刺激的な内容でしたので紹介したいと思います。

昨今、製造業界の大手企業がアジア企業に買収されており、
グローバル化の波がますます本格的に日本を飲み込もうとしているように感じます。
まさに今、日本の国際競争力が問われています。

そんな中、日本の伝統的な価値観や考え方と高い技術力を融合させ、
世界最高レベルのコンテンツを生み出す企業があります。
本書では、そのような企業として次の4つの企業を紹介しています。

  • チームラボ
  • タクラム・デザイン・エンジニアリング
  • ライゾマティクス
  • 寒川裕人とザ・ユージーン・スタジオ

恥ずかしながら、自分はこの内一つの企業しか存じ上げておりませんでしたが、
いずれも他に類を見ない素晴らしいアートを創造されていることが知れます。

本書は、次のような全体構成です。
それぞれ1章ごとにその代表作品やそれを実現するテクノロジー、
また創造されるプロセスや企業文化などを解説してくれます。
最後に、終章「最先端アートの過去・現在・未来」では、
これらの企業の創作活動と過去の芸術活動の共通点、
そして各企業の現在の取り組みと将来の構想を紹介しています。

あえて極端に言いますが、アートというのは、
「個人」が「絶対的感性」を「一方的」に表現するものというイメージはないでしょうか?

全てに当てはまるわけではありませんが、本書で紹介される各企業のアートは、
以下のような特徴を持っている点が、これまでのアートと根本的に違うように感じました。

  • チームで組織的に制作
  • ビジネスとして、問に本質的に答える作品
  • 鑑賞者とインタラクティブに創造

私自信が持っているアートのイメージを覆すものばかりで最も印象的でした。

ただし、筆者は最終章で、実は日本も古来から組織で芸術活動をしていたパターンもあると述べています。 そして、それが日本の伝統を活かしている部分であり、素晴らしい作品を生み続ける共通の要因ではないかと 考察しているところが逆説的で興味深かったです。

本当にいずれも素晴らしい作品ばかりです。
本書は、各作品の紹介部分にQRコードが載っており、
実際にその作品の動画を見ながら読み進めることができるのが本書の良いところです。
筆者の文章での紹介に想像を膨らませては、実際に映像を見る醍醐味があります。

そして、大体想像を超えます。

また、特にITに不案内な読者が躓かないように専門用語は丁寧に解説が脚注されているところも非常に親切です。

短い紹介ですが、是非手にとって読んでみていただければと思います。

書評 『多読術』

セイゴオ先生が、読書について語るという面白くないはずがない一冊を紹介します。

多読術 (ちくまプリマー新書)

多読術 (ちくまプリマー新書)

本書はまず、編集担当者の高田さんという方からセイゴオ先生へのインタビュー形式で書かれており、テンポよく読むことができます。

内容としては、
前半部分がセイゴオ先生の人生における読書体験を紹介し、
後半部分は読書とは本質的に何かというテーマについての持論が怒涛の如く展開され、
最後は昨今の情報のデジタル化について言及されている、
という流れです。

数々の本の読み方の紹介の中で、クロニクル・ノートの話が非常に印象的でした。
クロニクル・ノートは、自作の年表のようなものです。
数冊のノートに1万年前から現代までの年号を予めふり、読んでいる本の内容を該当する年号のページに書き込んでいくそうです。
自分は、そのような作業を続けていける自信がありませんが。。
まさに知の巨人ですね。

 そして後半は、読書とはなにかというところを論じており、
一気に内容が難解になりますが、優しく説明してくれているので
最低限なんとなくわかった気にはなれます。(笑)
いや深いですこの部分は、一番読み応えがある部分だと思います。

全体的に内容は非常に濃いですが、読みやすい一冊です。

このような素晴らしい本が、古本屋で100円で入手できる世の中はこれまた素晴らしいです。

書評 『観察力を磨く 名画読解』

僕は、カフェや電車の中などで目に入る人の職業とか話している2人の関係を観察しながら推察するのが子供の頃から好きです。
探偵ものなどで指のタコなどを見つけて「あなたの職業は○○ですね。」などといったシーンに非常に憧れます。

本日紹介する本は、そのようないわゆる洞察力をどのように磨き、プライベートや仕事にどのように役立てるかを解説した 『観察力を磨く 名画読解』です。

観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解

はじめは、絵画の解説本かと思い手にとりましたが、主題は全然違いました。

著者は、本書を通じて「知覚の技法」と言うものを教えてくれます。
冒頭「始まり」の章で次のように述べています。

本書の目的は、目という驚異のコンピュータを使って、情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力を向上させることだ。しかもこの本は、読むと同時に体験できる。睡蓮や、ぴったりしたドレスを着た女性や、全裸の女性の助けを借りて、大きな概念を具体的事象と結びつけ、五感から入る情報を統合し、正確かつ客観的に他者に伝える方法を学ぶことができる。

このスキルが上達すると仕事も日々の生活もより良くなると僕は思っています。

仕事は言わずもがな、他人ができなかった発見が新しいビジネスやサービスの向上、競争優位性などにつながりますよね。

そしてこの「知覚の技法」は、以下の4つから構成されると著者は述べています。
章立てもこれに準じています。

  • 観察(Assess):生まれながらにもつ盲点を知り、効果的かつ客観的にものをみる
  • 分析(Analyze):集めた情報に優先順位をつけて、パターンを見つめて、事実と憶測を区別する
  • 伝達(Articulate):発見したことを言葉にし、効果的に伝える
  • 応用(Adapt):現実社会の中での上3つを実践する

そして、観察、分析、伝達を向上させるために「アート」の活用が非常に良いと書かれています。
その理由は、「アートには答えがあるから」ということです。
たしかに、答えがないと練習してもフィードバックが難しいですからね。

本書では、随所に絵や写真を交えて演習や解説があるので非常にイメージしやすく、楽しんで読むことができます。
同時に「知覚の技法」の難しさを実感しながら読むことができ、
次第にその重要性や有用性への理解と実感が深まっていきます。

ここでは、本書の「観察」の内容を少し紹介したいと思います。

知覚フィルター

個人にはそれぞれの潜在的な知覚フィルターが存在すると書かれています。
なので、同じものを見ても捉え方が異なってくる、ということです。

観察においては、自分の知覚フィルターの傾向を知ることも重要だし、
他人がどのような知覚フィルターを持っているかを知っておくことも重要であると筆者は述べています。

そして、自分の知覚フィルターを知ることで、それを意識すことができ、抑止や排除が可能となります。

では、知覚フィルターとは具体的にどういうものか。それはまぁ、人それぞれなのですが、
よくある知覚フィルターの特徴として本書では3つ挙げられています。

1. 見たいものを見る

一つ目は、主観によるフィルターです。
最近ハマっているものや学んだものなどはやはり目につきやすくなります。

この習性を認識しておくことで観察の偏りを修正できると述べています。
確認する方法としては、

  • 自分の予想と一致する情報ばかり収集していないか
  • 集めた情報により自分が得をすることがないか

という確認ポイントが提示されています。

なるほど、という感じですね。自分にも思い当たるフシがだいぶあります。。

2. 見ろと言われたものを見る

外部情報によるバイアスから生じるフィルターです。

例えば、絵画の場合は、タイトルや解説などがそれに当たると紹介されています。
当然、その内容やイメージに寄った見方をしてしまいますね。

まずは、そういった外部情報を遮断して事象の観察をすることが重要だと説きます。
その上で2回目は外部情報をふまえて再度観察することが重要とのことです。

3. 変化に気づけない

最後は、変化を前提としないことによるフィルターです。

物事は当然変化します。
ですが一度見たものは、前に見た、という意識から変化に気づきにくくなる傾向があるそうです。

確かに変化に気がつくことは非常に重要です。
私自身このフィルターが強い気がします。細かい変化に特に気が付きにくいタイプです。




いずれも、言われてみれば割りと当たり前なことで意外性はありませんが、
確かに無意識下でどのフィルターもかかっていることは納得できます。

以上、「観察」の章からの紹介ですが、これ以外にも観察の重要なポイントが多く述べられています。
さらに、「分析」「伝達」「応用」についても、その技法が丁寧に紹介されていて、大変勉強になります。

内容が濃いので、いきなりすべてをできるようにはならないですが、
少なくともこの本を読んで、ものを見る目は誰もが変わると思います。

生きていく上で非常に重要なスキルが身につく一冊ですので
是非読んでみてください!

観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解

書評 『江戸っ子が好んだ日々の和食』

昨今、諸外国で日本料理が注目されているそうです。といっても結構前からですが。
理由は、野菜や魚を中心とした食事で健康維持に良いと考えられているからだそうです。

最近、私も自分でご飯を作るときは、野菜がたくさんの具だくさん味噌汁と魚料理が多いです。
サンマの塩焼きなどこれを超える主菜はないのではないかと言うくらい好きです。

今回紹介する本は、江戸時代の食をテーマにした『江戸っ子が好んだ日々の和食』です。

江戸っ子が好んだ日々の和食

江戸っ子が好んだ日々の和食

本書を読んでいますと、日本食の原型は江戸時代にほぼ作り上げられたということがよくわかります。

和食の基本は江戸で成熟

例えば、一日三食は、江戸時代で定着したそうです。
そのきっかけは、明暦三年(1657年)に江戸市中を焼き尽くした明暦の大火らしいです。
この火事の復興のため、多くの大工や人夫、職人が諸国から江戸に集まってきました。

彼らは肉体労働が中心なので貴族のように一日二食では到底もたず、三食が主流になっていったそうです。

そう考えるとやはり現代人でデスクワーク中心の人は、三食いらないのかもしれません。。

この他、香の物や白米、豆腐や納豆などの和食に欠かせない料理がメジャーになっていった経緯や当時の様子などが書かれています。

今とちょっと違う食事情

マグロとフグは今はとても人気の高い食材ですが、江戸時代の武士は食べなかったそうで、この話が面白いです。

マグロは、「しび」とも言うらしく、これが「死日」に通じるため嫌われたそうです。
フグは、まぁそもそも毒のある魚なので、戦場で死ぬことが当たり前の武士が、食事に当たって死ぬなど考えられないことだったそうです。

冷蔵庫などなかった江戸ではそもそも生食は少し危険だったようですね。

また、江戸時代は表向き牛や馬、鶏などの肉を食べることも禁じられていたようです。
病気の人や体の弱い人は「薬食い」といって食べていたようですが。 とはいっても、やはり美味しいからでしょうか。中後期からは、すき焼きのルーツである牛鍋が大流行し、肉食が一般的になっていったようです。

素朴で美味しそうな八杯豆腐

江戸では、お豆腐が大人気だったようで、当時の独特な食べ方「八杯豆腐」が紹介されています。

「八杯豆腐」という食べ方もあった。豆腐を薄く細く切り、これを水四杯。醤油二杯、酒二杯の割合で混ぜた汁で煮て食べる、という料理だった。

これがすごく美味しそうなんです。

ググってみたら同じ思いの人がいたのか、つくっている人がおり、クックパッドに幾つかレシピが散見されました。

この料理は、江戸のおかず番付の「日々徳用倹約料理角力番付」の精進方の人気第一位だったり、「豆腐百珍」という本に紹介されたりする超人気料理だったようです。
当時も、ランキングやレシピ本があったことが非常に面白いと思いませんか。

さて、今回幾つかピックアップして紹介しましたが、他にも色々と江戸の料理や食事情が紹介されていて大変おもしろい本です。
文章も優しくボリュームも多くないので非常に読みやすい本です。是非読んでみてください。

江戸っ子が好んだ日々の和食

江戸っ子が好んだ日々の和食

また、個人的には、本書で良く引用される『守貞漫稿』という当時の本がかなり気になります。
なんと岩波文庫にありました。いつか読んでみたいです。五巻までありますね。。

近世風俗志―守貞謾稿 (1) (岩波文庫)

近世風俗志―守貞謾稿 (1) (岩波文庫)

書評『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』

本日は、「エピジェネティクス」という遺伝子関連のテーマについてかかれた書籍
『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』
について紹介したいと思います。

昨今、DNAという言葉と聞いたことがない人はほぼいないかと思いますが、 DNAは生物の設計図と呼ばれ、生物を形成する根源的な情報です。

そして、そのDNAは、遺伝子から構成されます。
遺伝子は、タンパク質の構成要素であるアミノ酸の並びを記録した物質のことです。
この並びの違いがタンパク質の性質、つまり働きの違いを生みます。

DNAの遺伝子からタンパク質が作られ、そのタンパク質が働くことが生命活動そのものです。
体を形づくるのも、病気になるのも、ミクロな世界ではそういうことが起きています。

このタンパク質の生成を「遺伝子の発現」と言います。

従来、生物の形質は遺伝子により絶対的に決定されるという考え方でした。
つまり、同じ遺伝子なら同じ形質を生む、という考え方です。

しかし、実際はこれは誤った見方であると筆者は述べています。
その理由は、遺伝子の発現の有無は不変ではなく様々な条件で変わる可能性があり、
かつ発現は二値的ではなく表現の程度があるから
、とのことです。

これを「エピジェネティクス」と言うそうです。本文を引用しますと、エピジェネティクスとは、

1世代のあいだに遺伝形質がどのように変化し、変化させられるか、さらにはその変化がどのようにして次の世代に引き継がれるかを研究する学問

と述べられています。

非常に興味深いテーマだと思いませんか!

DNAが同じでも形質が異なるというわかりやすい例が紹介されています。

女王蜂と働き蜂

実は、女王蜂とメスの働き蜂のDNAは全く同じになります。
(ちなみに、これは半倍数性という特殊は生殖の昆虫ゆえです。興味のある方は調べてみてください。)

では、なにでどちらになるか決まってくるのか。 それはずばり食べ物の違いです!
コロニーに女王蜂が必要になると特定の幼虫にはローヤルゼリーが与えられ、女王蜂になるそうです。
これは、ローヤルゼリーの摂取により特定遺伝子の発現に変化が起きるためです。

DNAは同じですが、見た目も行動も全く違う生物になります。
普通遺伝的に異なる生物だと思ってしまいますよね。

みんな突然変異を抱えている

本文より

実際、最近ぼくが関与したある研究プロジェクトでも、こんなことがあった。遺伝子的な基準値を作成する目的で「健康である」とみなした人たちすべての遺伝子配列に。それまで健康的だと考えられていた配列と一致しない何らかのタイプの異変が必ず見つかったのだ。

人はみな何かしらの遺伝子的異変を抱えているということを筆者自身の体験で紹介しています。

筆者は、富士山に登った際に低圧低酸素環境における高山病にかかり、自身がそれになりやすい体質と知ったとのこと。
標高の高い地域で生活するのに適した遺伝子を持たない人は、筆者のようになる恐れがあると述べます。

では、これをエピジェネティクスで克服するためには、
実際に高地で暮らすことで時間をかけて順応するための遺伝子の発現を調整するなどができるといっています。
エリスロポエチンという赤血球の働きを活性化するホルモンは、
骨髄の細胞を刺激して赤血球を増産したり、血液中の赤血球の寿命を伸ばしたりするらしいです。 エリスロポエチンを発現する遺伝子を活性化させることで高地での生活への適用性が高まると述べています。

また、環境への適用という意味では違和感はないですね。

手っ取り早くは、薬で調整するという方法もあるとも述べています。

また、ここでは割愛しますが、驚くことに遺伝子の発現の調整は、次世代に引き継がれることも本書では紹介されています。

遺伝子の突然変異を知る

今は、遺伝子検査などで自分の遺伝子の特徴がわかります。
よって、自分が遺伝的にどういう特徴をもち、何を気にしていれば良いのかを知ることができます。

また、遺伝子検査などしなくとも、遺伝的特徴は外見に現れやすいと、筆者は述べます。
ディスモルフォロジーという外見から遺伝的特徴を知る学問があるらしいです。筆者はこちらもご専門のようですね。

このように、遺伝子を絶対的な運命と受け取るのではなく、環境や行動などの後天的要素で遺伝の影響を変化させることができるというのが本書の主な内容でした。

全体的に、特異な遺伝子による様々な影響も持った人の紹介や上記のディスモルフォロジーの話が多かったように思います。
ではそれをどう変えていくのかというエピジェネティクスの内容が若干少なく感じました。 タイトルからはそこを期待してしまうのでやや残念ですが、十分に興味深い内容でした。 興味が湧いた方、元々興味のある方は、是非買って読んでみてください。

そして、訳者あとがきに筆者の次作 “DNA Restart"が少しだけ紹介されています。
翻訳刊行が待ち遠しいですね!下記は原著です。

The DNA Restart: Unlock Your Personal Genetic Code to Eat for Your Genes, Lose Weight, and Reverse Aging

The DNA Restart: Unlock Your Personal Genetic Code to Eat for Your Genes, Lose Weight, and Reverse Aging

書評 『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』

皆様は、テキストマイニング自然言語処理という言葉を聞いたことがありますでしょうか。

いずれも人間同士が日常に使う言語をコンピュータに読解させる技術です。
読解の目的は、人間と同様で様々です。

  • 文章のキーワードを把握する
  • 文章同士や単語同士が似ているか判定する
  • 文章を要約する

などなど、他にもたくさんあります。

そして、ご存知の方も多いかと思いますが、すでに世の中のサービスでその技術は活用されています。
例えば、

  • Yahoo!Googleなどの検索エンジンで目的のウェブサイトが表示される
  • ニュースサイトで関連や似たニュース記事が推薦される

などなど、実はいろんなサービスで活用されています。
最近は、自然言語処理が活用された取り組みがやや拡大解釈されAIと言われ日々新聞などを賑わしています。

今回は、自然言語処理の割りと珍しい応用法を紹介した書籍『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』を紹介します。
ズバリ!タイトルどおり、売れる小説をコンピュータに判定させようというかなり面白い取り組みです。

是非読んでいただきたいです。

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

自然言語処理の手法などには全く詳しく触れず、この分野に不案内な方でも非常に読みやすい内容になっています。 「なるほど最近はITを活用してこんな事もできるのか!」と気楽な気持ちで読み進めていけばよいかと思います。

さて、果たしてコンピュータにそんなことができるのか、という感じがしますが、
結論としては、約80%の確率で売れる小説とそうでないものを判定できたそうです。

まぁ、感覚的に一定のパターンはありそうですので、自分としてはそこまで意外な話ではないですが。

さて、それでは内容を少し紹介したいと思います。

書くテーマによって売れる売れないが決まる!?

小説が何について書かれているかを分析すると一定のパターンがあると筆者は述べています。

  • 約3分の1は、特定の1テーマについて書かれている
  • 日常的・現実的なテーマを扱っている

前者について、
ベストセラー小説はその内容の3分の1を一つないしは二つのテーマについて書いているそうです。 そして残りの3分の2は、それとは別のテーマを書く傾向にあるとのことです。 逆に売れない小説は、複数のテーマを詰め込む傾向があるそうです。

後者について、
売れる作家は「結婚」「死」「税金」といったリアリズムを感じさせるテーマを選ぶそうですが、売れない作家は宇宙戦争などの非現実的なテーマを選びがちだということです。非現実がからならずしも売れないわけではないですが、困難さが増すようです。

つまり、売れる小説は少数の現実的なテーマにフォーカスしている傾向が強いようです。

ちなみに、この分析に使われた手法はトピック分析と言って非常に面白い手法です。
興味がある方は少し調べてみてください!

女性作家のほうが売れやすい文体!?

もう一つの特徴として文体が挙げられています。
文体は、具体的に言いますと、利用する単語の頻度や句読点の頻度などで評価しているようです。

そして売れる文体の特徴を持つベストセラーをランキングすると女性作家が上位を占めたそうです。 これについて著者は、売れる文体の特徴は「普通の人が理解できる言葉や文章」であり、あくまで一般的に女性にその能力が高いと考察しています。
また、その理由としては、英文学の世界が男性優位社会であるため、そこで活躍できなかった女性がジャーナリズムの世界でものを書くことを学んだためだと述べています。

この他にも、ストーリの感情の変化を分析して一定の売れるパターンを発見したり、よく使われる動詞を分析してキャラクターの特徴のパターンを見つけたりととても興味深い内容です。
是非読んで頂きたいです! (ちなみに、感嘆詞の多用は売れない傾向にあるらしいです・・・)

本書の難点を唯一挙げるとすれば、本文中に出てくる小説が当然アメリカのものなので日本人にはいまいち例としてピンとこないと言う点でしょうか(笑)。
まぁ、これは別に本書が悪いわけではないですね。アメリカの小説をよく読んでいる人はより理解し易いのかもしれません。

こんな方にオススメ

最後に、本書を特にオススメしてみたい方とその理由を書きます。

  • 出版社の方

AIによって将来仕事がなくなる職業などがよく話題になりますが、本書の技術が成熟すると編集者の方には脅威になるかもしれません。

もちろん機械が簡単に成り代われるものではないでしょうが、昨今経験やカン、直感などが重要視されてきた分野でデータによるコンピュータの判断のほうが上回る事例が多くなってきています。

今のコンピュータがどのレベルまで来ているか知るために良い一冊かと思います。

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

書評 『生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』

ビジネス書は普段さほど読みませんが、ここ半年くらいで最も勉強になったビジネス書を紹介したいと思います。

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

著者は、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社出身の「伊賀 泰代」さんです。 この方は、マッキンゼーコンサルタントのご経験を経て、人事部門のマネージャーを務めていたそうです。

僕がこれまで本書と同様に「良い!」と思うビジネス書は、マッキンゼー出身の方の書籍が少なくない気がします。 さすが最大手コンサルティングファームというところでしょうか。それらの書籍は、最後にリンクを掲載しておきます。

伊賀さんは、「はじめに」で日本企業や社会と米国のそれらとの大きな違いを次の2つだと述べています。

  • リーダーシップへの意識
  • 生産性の高さ

前者は、前著『採用基準』で言及しておられます。本書は、後者のテーマにフォーカスしたものです。

米国では、生産性とそれを評価することに対する意識の高さが、日本とは根本的に違うようです。 かと言って、決して日本も生産性を蔑ろにしているわけではありません。現に日本の製造現場の生産性は、 長らく他国を圧倒してきました。 しかし、それは一部の産業や業種であったり、生産性という概念のあくまで一部であり、課題があると著者は述べます。

企業として生産性を向上させることは、純粋に競争力の強化や事業継続性を高めることに繋がると思います。 更に、昨今注目を浴びています労働時間の長期化や育児環境の向上などの社会的な課題の解決としても抜本的なものになると僕は感じました。 国策として取り組むことも重要だとは思いますが、自ら課題解決に取り組むことがさらに重要であり、本書は大変役に立つと思われます。

それでは、内容のキーポイントを紹介したいと思います。

生産性向上の考え方

そもそも「生産性」とは、

 アウトプット ÷ インプット

です。もう少しビジネスにおける表現で言いますと、

 得られた成果 ÷ 投入した資源

となります。再確認という感じですね。

そして、上記の式の通り、生産性を向上させるには、

  • 成果を増やす
  • 投入資源を減らす

の2通りになります。これらのやり方として更に以下の2つに分かれます。

つまり、以下の4つのアプローチがあると著者は整理します。

  • 改善による投入資源の削減
  • 革新による投入資源の削減
  • 改善による付加価値額の増加
  • 革新による付加価値額の増加

日本では、特に革新つまりイノベーションのアプローチの意識が低いと著者は説きます。

そして、このイノベーションには2つの要素が不可欠とおっしゃっています。

一つは、「イノベーションのための時間的余裕」です。業務の削減や単純作業の機械化など常に生産性を意識することで、イノベーションに使える時間を向上的に増やすことです。

次に、「イノベーションのためのモチベーション」です。こちらのほうが個人的にはなるほど!という感じでした。 これは、社員に問題意識とそれを解決する強い動機を持たせるということですが、そのために必要なのは乗り越えるのが困難な制約を設けることと筆者は述べています。

人は乗り越えるべき制約がないと何かを根本から変えるような考えに至らない。だから一見無理にも思えるような制約を課すことで圧倒的な効果を生むアイデアが生まれるようになるとのことです。

確かに、僕の会社でもイノベーションを起こしている人は、はじめに上司から「今のコストを半分にしろ」とか「売上を一桁増やせ」とか言われたなどと聞くことが多いように感じます。

それを見ていていつも思いますのは、上司の与える制約が絶妙なラインだということです。はじめは、絶対無理だと誰もが思うのですが、なんとかギリギリ達成できる結果となっています。

量から質へ

生産性を向上させるためには、量から質への思考の転換が必要と著者は説きます。

何かの問題を解決する際に、量ではなく、質をコントロールして解決する必要があるということです。

例えば、残業時間が問題になっている場合(2017年4月現在、とてもホットな話題ですが)、「残業時間を○○に減らしましょう」という解決方針は量をコントロールしているに過ぎず、根本的な解決にならないという話です。

残業時間を制限するだけでは、当然業務量は変わりませんので、どう考えても残業時間にカウントされない帰宅後の仕事の持ち帰りは目に見えています。 そうではなく、次に一部紹介するような生産性の向上を意識して残業を減らす方針をベースとする必要があります。

では何をどう実践するのがよいか

本書の後半は、生産性を向上させるための実践的なノウハウの紹介となります。 ここでは、一部を紹介したいと思います。

一つ目は、業務仕分けによる不要な仕事の廃止です。 業務は時間の経過とともに不要になることがあります。このような業務を定期的に洗い出し、やめる判断をすることが重要であるとおっしゃっています。なぜなら、これは効果が大きく、大抵の場合ノーコストですぐに効果が出るからです。

僕自身もこの重要性を経験しました。長らく運用されている業務に自分が新たなリーダとして加わった時に、チームの労働時間の多さが気になりました。もともとチームに居るメンバは自分のタスクの必要性や重要度を忘れてしまっていたり、変化していることに気がつきにくかったりします。とにかくあらゆる既存タスクについて「なぜこれをやっているのか」ということをやっている本人と確認し、不要なものをやめることでチームの労働時間は適正化されました。成果は何も変わらないため、生産性が向上したと言えるかと思います。

逆に不要業務の廃止やその判断ができないリーダのチームは、概して労働負荷が高く疲弊しがちです。中にはその忙しさにご満悦なリーダさえいます。非常に危険ですね。僕自身は、リーダとしては常に心がけたいことの一つです。

二つ目は、ブランク資料です。 ブランク資料とは、上司や顧客にアウトプットする資料を初期段階で目次や資料のアウトプットイメージを実際に作ってしまって上司や顧客と認識を合わせるための資料のことだそうです。著者いわくコンサルティングファームでは一般的な言葉らしいです。

言葉は初めて聞きましたが、このプロセスは、僕も現職で非常に重要であると気が付きました。特に意思決定を目的とする資料に関しては、これは必須と言っても過言ではないと考えています。
初めから一人で最終的なアウトプットを作ろうとする人は、上司や顧客と最後の最後で前提やキーポイントがずれていて「やり直し」となるのをよく見かけますし、自分もたまにあります。最悪の場合、資料の1ページ目から「全然違う!」と上司に一括されて無駄になるケースすらあります。

資料作りに時間がかかると言っている人は、これをしない方が多い気がします。ただ、会社や組織の風土的にそれができないと少しつらいですね。例えば、「出来上がっていないものを俺のところに持ってくるな」みたいなことを言う上司だったりと言うパターンです。まさに質で評価できない方でしょうか。

他にも以下のような内容が紹介されており、生産性向上のために非常に実践的でためになります。
ぜひ買って読んでいただきたいと思います。

  • トップパフォーマーの育成
  • お荷物になりがちな中高年の育成
  • 管理職のチームマネジメント
  • 有効な研修
  • 会議の進め方

こんな方にオススメ

最後に、本書を特にオススメしてみたい方とその理由を書きます。

良書なので、すべてのビジネスパーソンにオススメですが、特に次のような方に良いのではと個人的には思います。

  • 新入社員
  • 育児とのバランスが必要な方

新入社員にオススメの理由は、この内容は裏を返せばみなさんが入った会社の先輩方は生産性への意識が低い可能性が高く、本書を読むことで、

  • そんな彼らが作ってきた仕事の課題を発見かつ解決できる
  • 彼らより生産性の高い成果を上げることができる

と考えるからです。
ほぼ間違いなく新入社員はシニアやベテランに経験値では負けるので、勝負するポイントとして良いかと思います。

次に、育児とのバランスが必要な方へおすすめする理由は、まぁこれは言わずともわかるかと思いますが、生産性を上げてとにかく家庭での時間を確保するためです。

実は、僕自身も、この春から妻が仕事に復帰し、保育園のお迎えや家事などを行う時間を確保する必要があります。冒頭にも述べましたが、行政に頼るだけでなく自分自身で課題を解決する必要があると思っています。
はっきり言ってこれまで生産性を意識していたかというとお世辞にもそうは言えないので、これを契機に自分や自組織の仕事を見つめ直しつつ生産性の向上を図っていきたいと思っています。同じような状況のみなさんも共に頑張っていければと思い、本書をオススメしたいと思います。

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

参考:その他マッキンゼー出身の方が書かれたビジネス書

冒頭に述べました、僕がよかったと思ったビジネス書で、マッキンゼー出身の方が書かれたものをリンクしておきます。

こちらもぜひ読んでみてください!

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

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企業参謀 (講談社文庫)

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イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

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