本の海

書籍や読書に関する情報を紹介します

書評 『教養は児童書で学べ』

絵本をおとなになってから読むと、その内容の奥深さに驚くことはないでしょうか。

子供の頃はただのお話として読んでいた本の中にも実は世の中の本質や理、
人間の性質の深いところを表していたりして、
これは一体誰向きに著者は書いたのかしらと思ってしまうものがあります。

例えば、「100万回生きたねこ」をおとなになって改めて読んだとき、
非常に心を打たれた記憶があります。子供の頃に読んだ印象とは全く違いました。

今回ご紹介する本は、
生命保険業界にイノベーションを起こしたライフネット生命
創業者であります出口 治明さんの『教養は児童書で学べ』です。

教養は児童書で学べ (光文社新書)

教養は児童書で学べ (光文社新書)

8/20に発売されましたできたてほやほやの新書です。
書店で発見して即買でした。

本書では、出口さんがオススメする子供向けの本10冊が紹介されています。
10冊のラインナップについては、是非実際に読んで確認していただきたいのですが、
ほとんどがすごく有名なものばかりです。

一冊ごとに章立てされている構成です。
各章ごとに併せて読みたい本なども紹介されていて、こちらも読みたくなる本ばかりです。

著名な10冊ですが、出口さんの圧倒的な読書量に裏打ちされた多彩かつ濃厚な解説が 非常に読み応えがあり、読んだことがあるものでも新しい発見だらけです。
と言いますか、すごく勉強になります。

私も本ブログで書籍を紹介していますが、こんな本の紹介ができたらいいなと非常に強く思います。

例えば、
アラビアンナイト』を紹介する章では、アラブの民族や風土を解説されております。
正直日本人には馴染みのない文化ですね。でも、物語を読むのに非常に大切な前提知識だと思います。

もちろん、
女性不信になり毎晩若い女性を殺している王様に自分が殺されないように、
シェヘラザードという女性が王様に続きが気になる話をしたのが「アラビアンナイト(千一夜物語)」、
という有名な設定の紹介なんかも漏らしません。

他の9冊が何か気になるところだと思います。
非常に素晴らしい本ですので、是非手にとって読んでみてください。

教養は児童書で学べ (光文社新書)

教養は児童書で学べ (光文社新書)

書評 『日本の人事を科学する』

2011年にブラット・ピット主演の『マネー・ボール』という映画が話題なりました。

その内容は、メジャーリーグの中で資金力もない弱小の1チームであるアスレチックスが
独自の手法で選手を採用し、強豪チームを作り上げていくというものである。

その独自の手法というのは、「セイバーメトリクス」と呼ばれるデータを元にした 優秀な選手の分析と定義を行い、それに基づいて選手を採用すると言うものである。

通常は、スカウトマンが選手を目利きしたり、打率や打点などの成績を見て、 主観的に採用かつその報酬額も決定していた。

ところが、アスレチックスは、そのような従来の方法に対し、チームの勝利に貢献する数字をデータから客観的に明らかにしました。
例えば、出塁率などです。他チームと違う観点で評価しているため報酬額もむやみに上がることなく、 チームの資金でもっともコストパフォーマンスの高いチームビルディングができたらしいです。
(参考:マネー・ボール - Wikipedia)

前置きが長くなってしまいましたが、
今回ご紹介する本は、まさに採用など企業の人事に関する課題に対して、科学的にアプローチすることを
テーマにした『日本の人事を科学する』です。

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

本書では、昨今話題になっている以下のテーマを取り扱っています。

  • 女性活躍支援
  • 働き方改革
  • 採用
  • 管理職評価
  • 離職
  • 高齢者雇用

今、企業の人事でこれらの課題について、データを元にして取り組みを決定したり評価している企業は、ほぼないと筆者は指摘します。 私もそんな企業あまり聞いたことがありません。

人事でデータの活用が進まない理由として、筆者は、人事部のスタッフが往々にして統計学などの馴染みのない文系人材ばかりとなるため、
と述べています。

しかし昨今、少子高齢化という社会問題を背景とした、共働き子育てや介護、人材の多様性などが喫緊の課題となるなか、
人事的取り組みとして効率的にこれらの問題を解決していくことが求められている状況にあるため、
科学的なアプローチが求められていると私は理解しています。

実際、最近はHR-Techという言葉が出てきており、人事の課題を主にITのテクノロジーを活用して解決していこうというトレンドがあります。

本書は、統計学や数学的知識が全くない人でも読みやすいです、とはお世辞にも言えません
ただ、それのあたりをわからないまま読んでも、課題の内容やその課題への取組を検討する際の考え方やアプローチの特性、必要な知識やスキルなどなどは理解できると思います。
それだけでも読む価値があると思いますが、やはり本書で親切に紹介してくれている参考文献などで統計的手法などから含めて最終的には深く理解することが重要であると思います。

各テーマの詳しい内容は、是非実際に本書を読んでみていただければと思います。

人事組織に所属されていて、主に経験と勘で業務がなされているなぁ、と感じている方は今まさに必読だと思います!

書評 『アート×テクノロジーの時代 社会を変革するクリエイティブ・ビジネス』

友人に薦められて手に取った本書ですが、個人的に非常に刺激的な内容でしたので紹介したいと思います。

昨今、製造業界の大手企業がアジア企業に買収されており、
グローバル化の波がますます本格的に日本を飲み込もうとしているように感じます。
まさに今、日本の国際競争力が問われています。

そんな中、日本の伝統的な価値観や考え方と高い技術力を融合させ、
世界最高レベルのコンテンツを生み出す企業があります。
本書では、そのような企業として次の4つの企業を紹介しています。

  • チームラボ
  • タクラム・デザイン・エンジニアリング
  • ライゾマティクス
  • 寒川裕人とザ・ユージーン・スタジオ

恥ずかしながら、自分はこの内一つの企業しか存じ上げておりませんでしたが、
いずれも他に類を見ない素晴らしいアートを創造されていることが知れます。

本書は、次のような全体構成です。
それぞれ1章ごとにその代表作品やそれを実現するテクノロジー、
また創造されるプロセスや企業文化などを解説してくれます。
最後に、終章「最先端アートの過去・現在・未来」では、
これらの企業の創作活動と過去の芸術活動の共通点、
そして各企業の現在の取り組みと将来の構想を紹介しています。

あえて極端に言いますが、アートというのは、
「個人」が「絶対的感性」を「一方的」に表現するものというイメージはないでしょうか?

全てに当てはまるわけではありませんが、本書で紹介される各企業のアートは、
以下のような特徴を持っている点が、これまでのアートと根本的に違うように感じました。

  • チームで組織的に制作
  • ビジネスとして、問に本質的に答える作品
  • 鑑賞者とインタラクティブに創造

私自信が持っているアートのイメージを覆すものばかりで最も印象的でした。

ただし、筆者は最終章で、実は日本も古来から組織で芸術活動をしていたパターンもあると述べています。 そして、それが日本の伝統を活かしている部分であり、素晴らしい作品を生み続ける共通の要因ではないかと 考察しているところが逆説的で興味深かったです。

本当にいずれも素晴らしい作品ばかりです。
本書は、各作品の紹介部分にQRコードが載っており、
実際にその作品の動画を見ながら読み進めることができるのが本書の良いところです。
筆者の文章での紹介に想像を膨らませては、実際に映像を見る醍醐味があります。

そして、大体想像を超えます。

また、特にITに不案内な読者が躓かないように専門用語は丁寧に解説が脚注されているところも非常に親切です。

短い紹介ですが、是非手にとって読んでみていただければと思います。

書評 『多読術』

セイゴオ先生が、読書について語るという面白くないはずがない一冊を紹介します。

多読術 (ちくまプリマー新書)

多読術 (ちくまプリマー新書)

本書はまず、編集担当者の高田さんという方からセイゴオ先生へのインタビュー形式で書かれており、テンポよく読むことができます。

内容としては、
前半部分がセイゴオ先生の人生における読書体験を紹介し、
後半部分は読書とは本質的に何かというテーマについての持論が怒涛の如く展開され、
最後は昨今の情報のデジタル化について言及されている、
という流れです。

数々の本の読み方の紹介の中で、クロニクル・ノートの話が非常に印象的でした。
クロニクル・ノートは、自作の年表のようなものです。
数冊のノートに1万年前から現代までの年号を予めふり、読んでいる本の内容を該当する年号のページに書き込んでいくそうです。
自分は、そのような作業を続けていける自信がありませんが。。
まさに知の巨人ですね。

 そして後半は、読書とはなにかというところを論じており、
一気に内容が難解になりますが、優しく説明してくれているので
最低限なんとなくわかった気にはなれます。(笑)
いや深いですこの部分は、一番読み応えがある部分だと思います。

全体的に内容は非常に濃いですが、読みやすい一冊です。

このような素晴らしい本が、古本屋で100円で入手できる世の中はこれまた素晴らしいです。

書評 『観察力を磨く 名画読解』

僕は、カフェや電車の中などで目に入る人の職業とか話している2人の関係を観察しながら推察するのが子供の頃から好きです。
探偵ものなどで指のタコなどを見つけて「あなたの職業は○○ですね。」などといったシーンに非常に憧れます。

本日紹介する本は、そのようないわゆる洞察力をどのように磨き、プライベートや仕事にどのように役立てるかを解説した 『観察力を磨く 名画読解』です。

観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解

はじめは、絵画の解説本かと思い手にとりましたが、主題は全然違いました。

著者は、本書を通じて「知覚の技法」と言うものを教えてくれます。
冒頭「始まり」の章で次のように述べています。

本書の目的は、目という驚異のコンピュータを使って、情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力を向上させることだ。しかもこの本は、読むと同時に体験できる。睡蓮や、ぴったりしたドレスを着た女性や、全裸の女性の助けを借りて、大きな概念を具体的事象と結びつけ、五感から入る情報を統合し、正確かつ客観的に他者に伝える方法を学ぶことができる。

このスキルが上達すると仕事も日々の生活もより良くなると僕は思っています。

仕事は言わずもがな、他人ができなかった発見が新しいビジネスやサービスの向上、競争優位性などにつながりますよね。

そしてこの「知覚の技法」は、以下の4つから構成されると著者は述べています。
章立てもこれに準じています。

  • 観察(Assess):生まれながらにもつ盲点を知り、効果的かつ客観的にものをみる
  • 分析(Analyze):集めた情報に優先順位をつけて、パターンを見つめて、事実と憶測を区別する
  • 伝達(Articulate):発見したことを言葉にし、効果的に伝える
  • 応用(Adapt):現実社会の中での上3つを実践する

そして、観察、分析、伝達を向上させるために「アート」の活用が非常に良いと書かれています。
その理由は、「アートには答えがあるから」ということです。
たしかに、答えがないと練習してもフィードバックが難しいですからね。

本書では、随所に絵や写真を交えて演習や解説があるので非常にイメージしやすく、楽しんで読むことができます。
同時に「知覚の技法」の難しさを実感しながら読むことができ、
次第にその重要性や有用性への理解と実感が深まっていきます。

ここでは、本書の「観察」の内容を少し紹介したいと思います。

知覚フィルター

個人にはそれぞれの潜在的な知覚フィルターが存在すると書かれています。
なので、同じものを見ても捉え方が異なってくる、ということです。

観察においては、自分の知覚フィルターの傾向を知ることも重要だし、
他人がどのような知覚フィルターを持っているかを知っておくことも重要であると筆者は述べています。

そして、自分の知覚フィルターを知ることで、それを意識すことができ、抑止や排除が可能となります。

では、知覚フィルターとは具体的にどういうものか。それはまぁ、人それぞれなのですが、
よくある知覚フィルターの特徴として本書では3つ挙げられています。

1. 見たいものを見る

一つ目は、主観によるフィルターです。
最近ハマっているものや学んだものなどはやはり目につきやすくなります。

この習性を認識しておくことで観察の偏りを修正できると述べています。
確認する方法としては、

  • 自分の予想と一致する情報ばかり収集していないか
  • 集めた情報により自分が得をすることがないか

という確認ポイントが提示されています。

なるほど、という感じですね。自分にも思い当たるフシがだいぶあります。。

2. 見ろと言われたものを見る

外部情報によるバイアスから生じるフィルターです。

例えば、絵画の場合は、タイトルや解説などがそれに当たると紹介されています。
当然、その内容やイメージに寄った見方をしてしまいますね。

まずは、そういった外部情報を遮断して事象の観察をすることが重要だと説きます。
その上で2回目は外部情報をふまえて再度観察することが重要とのことです。

3. 変化に気づけない

最後は、変化を前提としないことによるフィルターです。

物事は当然変化します。
ですが一度見たものは、前に見た、という意識から変化に気づきにくくなる傾向があるそうです。

確かに変化に気がつくことは非常に重要です。
私自身このフィルターが強い気がします。細かい変化に特に気が付きにくいタイプです。




いずれも、言われてみれば割りと当たり前なことで意外性はありませんが、
確かに無意識下でどのフィルターもかかっていることは納得できます。

以上、「観察」の章からの紹介ですが、これ以外にも観察の重要なポイントが多く述べられています。
さらに、「分析」「伝達」「応用」についても、その技法が丁寧に紹介されていて、大変勉強になります。

内容が濃いので、いきなりすべてをできるようにはならないですが、
少なくともこの本を読んで、ものを見る目は誰もが変わると思います。

生きていく上で非常に重要なスキルが身につく一冊ですので
是非読んでみてください!

観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解

書評 『江戸っ子が好んだ日々の和食』

昨今、諸外国で日本料理が注目されているそうです。といっても結構前からですが。
理由は、野菜や魚を中心とした食事で健康維持に良いと考えられているからだそうです。

最近、私も自分でご飯を作るときは、野菜がたくさんの具だくさん味噌汁と魚料理が多いです。
サンマの塩焼きなどこれを超える主菜はないのではないかと言うくらい好きです。

今回紹介する本は、江戸時代の食をテーマにした『江戸っ子が好んだ日々の和食』です。

江戸っ子が好んだ日々の和食

江戸っ子が好んだ日々の和食

本書を読んでいますと、日本食の原型は江戸時代にほぼ作り上げられたということがよくわかります。

和食の基本は江戸で成熟

例えば、一日三食は、江戸時代で定着したそうです。
そのきっかけは、明暦三年(1657年)に江戸市中を焼き尽くした明暦の大火らしいです。
この火事の復興のため、多くの大工や人夫、職人が諸国から江戸に集まってきました。

彼らは肉体労働が中心なので貴族のように一日二食では到底もたず、三食が主流になっていったそうです。

そう考えるとやはり現代人でデスクワーク中心の人は、三食いらないのかもしれません。。

この他、香の物や白米、豆腐や納豆などの和食に欠かせない料理がメジャーになっていった経緯や当時の様子などが書かれています。

今とちょっと違う食事情

マグロとフグは今はとても人気の高い食材ですが、江戸時代の武士は食べなかったそうで、この話が面白いです。

マグロは、「しび」とも言うらしく、これが「死日」に通じるため嫌われたそうです。
フグは、まぁそもそも毒のある魚なので、戦場で死ぬことが当たり前の武士が、食事に当たって死ぬなど考えられないことだったそうです。

冷蔵庫などなかった江戸ではそもそも生食は少し危険だったようですね。

また、江戸時代は表向き牛や馬、鶏などの肉を食べることも禁じられていたようです。
病気の人や体の弱い人は「薬食い」といって食べていたようですが。 とはいっても、やはり美味しいからでしょうか。中後期からは、すき焼きのルーツである牛鍋が大流行し、肉食が一般的になっていったようです。

素朴で美味しそうな八杯豆腐

江戸では、お豆腐が大人気だったようで、当時の独特な食べ方「八杯豆腐」が紹介されています。

「八杯豆腐」という食べ方もあった。豆腐を薄く細く切り、これを水四杯。醤油二杯、酒二杯の割合で混ぜた汁で煮て食べる、という料理だった。

これがすごく美味しそうなんです。

ググってみたら同じ思いの人がいたのか、つくっている人がおり、クックパッドに幾つかレシピが散見されました。

この料理は、江戸のおかず番付の「日々徳用倹約料理角力番付」の精進方の人気第一位だったり、「豆腐百珍」という本に紹介されたりする超人気料理だったようです。
当時も、ランキングやレシピ本があったことが非常に面白いと思いませんか。

さて、今回幾つかピックアップして紹介しましたが、他にも色々と江戸の料理や食事情が紹介されていて大変おもしろい本です。
文章も優しくボリュームも多くないので非常に読みやすい本です。是非読んでみてください。

江戸っ子が好んだ日々の和食

江戸っ子が好んだ日々の和食

また、個人的には、本書で良く引用される『守貞漫稿』という当時の本がかなり気になります。
なんと岩波文庫にありました。いつか読んでみたいです。五巻までありますね。。

近世風俗志―守貞謾稿 (1) (岩波文庫)

近世風俗志―守貞謾稿 (1) (岩波文庫)

書評『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』

本日は、「エピジェネティクス」という遺伝子関連のテーマについてかかれた書籍
『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』
について紹介したいと思います。

昨今、DNAという言葉と聞いたことがない人はほぼいないかと思いますが、 DNAは生物の設計図と呼ばれ、生物を形成する根源的な情報です。

そして、そのDNAは、遺伝子から構成されます。
遺伝子は、タンパク質の構成要素であるアミノ酸の並びを記録した物質のことです。
この並びの違いがタンパク質の性質、つまり働きの違いを生みます。

DNAの遺伝子からタンパク質が作られ、そのタンパク質が働くことが生命活動そのものです。
体を形づくるのも、病気になるのも、ミクロな世界ではそういうことが起きています。

このタンパク質の生成を「遺伝子の発現」と言います。

従来、生物の形質は遺伝子により絶対的に決定されるという考え方でした。
つまり、同じ遺伝子なら同じ形質を生む、という考え方です。

しかし、実際はこれは誤った見方であると筆者は述べています。
その理由は、遺伝子の発現の有無は不変ではなく様々な条件で変わる可能性があり、
かつ発現は二値的ではなく表現の程度があるから
、とのことです。

これを「エピジェネティクス」と言うそうです。本文を引用しますと、エピジェネティクスとは、

1世代のあいだに遺伝形質がどのように変化し、変化させられるか、さらにはその変化がどのようにして次の世代に引き継がれるかを研究する学問

と述べられています。

非常に興味深いテーマだと思いませんか!

DNAが同じでも形質が異なるというわかりやすい例が紹介されています。

女王蜂と働き蜂

実は、女王蜂とメスの働き蜂のDNAは全く同じになります。
(ちなみに、これは半倍数性という特殊は生殖の昆虫ゆえです。興味のある方は調べてみてください。)

では、なにでどちらになるか決まってくるのか。 それはずばり食べ物の違いです!
コロニーに女王蜂が必要になると特定の幼虫にはローヤルゼリーが与えられ、女王蜂になるそうです。
これは、ローヤルゼリーの摂取により特定遺伝子の発現に変化が起きるためです。

DNAは同じですが、見た目も行動も全く違う生物になります。
普通遺伝的に異なる生物だと思ってしまいますよね。

みんな突然変異を抱えている

本文より

実際、最近ぼくが関与したある研究プロジェクトでも、こんなことがあった。遺伝子的な基準値を作成する目的で「健康である」とみなした人たちすべての遺伝子配列に。それまで健康的だと考えられていた配列と一致しない何らかのタイプの異変が必ず見つかったのだ。

人はみな何かしらの遺伝子的異変を抱えているということを筆者自身の体験で紹介しています。

筆者は、富士山に登った際に低圧低酸素環境における高山病にかかり、自身がそれになりやすい体質と知ったとのこと。
標高の高い地域で生活するのに適した遺伝子を持たない人は、筆者のようになる恐れがあると述べます。

では、これをエピジェネティクスで克服するためには、
実際に高地で暮らすことで時間をかけて順応するための遺伝子の発現を調整するなどができるといっています。
エリスロポエチンという赤血球の働きを活性化するホルモンは、
骨髄の細胞を刺激して赤血球を増産したり、血液中の赤血球の寿命を伸ばしたりするらしいです。 エリスロポエチンを発現する遺伝子を活性化させることで高地での生活への適用性が高まると述べています。

また、環境への適用という意味では違和感はないですね。

手っ取り早くは、薬で調整するという方法もあるとも述べています。

また、ここでは割愛しますが、驚くことに遺伝子の発現の調整は、次世代に引き継がれることも本書では紹介されています。

遺伝子の突然変異を知る

今は、遺伝子検査などで自分の遺伝子の特徴がわかります。
よって、自分が遺伝的にどういう特徴をもち、何を気にしていれば良いのかを知ることができます。

また、遺伝子検査などしなくとも、遺伝的特徴は外見に現れやすいと、筆者は述べます。
ディスモルフォロジーという外見から遺伝的特徴を知る学問があるらしいです。筆者はこちらもご専門のようですね。

このように、遺伝子を絶対的な運命と受け取るのではなく、環境や行動などの後天的要素で遺伝の影響を変化させることができるというのが本書の主な内容でした。

全体的に、特異な遺伝子による様々な影響も持った人の紹介や上記のディスモルフォロジーの話が多かったように思います。
ではそれをどう変えていくのかというエピジェネティクスの内容が若干少なく感じました。 タイトルからはそこを期待してしまうのでやや残念ですが、十分に興味深い内容でした。 興味が湧いた方、元々興味のある方は、是非買って読んでみてください。

そして、訳者あとがきに筆者の次作 “DNA Restart"が少しだけ紹介されています。
翻訳刊行が待ち遠しいですね!下記は原著です。

The DNA Restart: Unlock Your Personal Genetic Code to Eat for Your Genes, Lose Weight, and Reverse Aging

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