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時の最果て

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書評 『生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』

ビジネス書は普段さほど読みませんが、ここ半年くらいで最も勉強になったビジネス書を紹介したいと思います。

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

著者は、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社出身の「伊賀 泰代」さんです。 この方は、マッキンゼーコンサルタントのご経験を経て、人事部門のマネージャーを務めていたそうです。

僕がこれまで本書と同様に「良い!」と思うビジネス書は、マッキンゼー出身の方の書籍が少なくない気がします。 さすが最大手コンサルティングファームというところでしょうか。それらの書籍は、最後にリンクを掲載しておきます。

伊賀さんは、「はじめに」で日本企業や社会と米国のそれらとの大きな違いを次の2つだと述べています。

  • リーダーシップへの意識
  • 生産性の高さ

前者は、前著『採用基準』で言及しておられます。本書は、後者のテーマにフォーカスしたものです。

米国では、生産性とそれを評価することに対する意識の高さが、日本とは根本的に違うようです。 かと言って、決して日本も生産性を蔑ろにしているわけではありません。現に日本の製造現場の生産性は、 長らく他国を圧倒してきました。 しかし、それは一部の産業や業種であったり、生産性という概念のあくまで一部であり、課題があると著者は述べます。

企業として生産性を向上させることは、純粋に競争力の強化や事業継続性を高めることに繋がると思います。 更に、昨今注目を浴びています労働時間の長期化や育児環境の向上などの社会的な課題の解決としても抜本的なものになると僕は感じました。 国策として取り組むことも重要だとは思いますが、自ら課題解決に取り組むことがさらに重要であり、本書は大変役に立つと思われます。

それでは、内容のキーポイントを紹介したいと思います。

生産性向上の考え方

そもそも「生産性」とは、

 アウトプット ÷ インプット

です。もう少しビジネスにおける表現で言いますと、

 得られた成果 ÷ 投入した資源

となります。再確認という感じですね。

そして、上記の式の通り、生産性を向上させるには、

  • 成果を増やす
  • 投入資源を減らす

の2通りになります。これらのやり方として更に以下の2つに分かれます。

つまり、以下の4つのアプローチがあると著者は整理します。

  • 改善による投入資源の削減
  • 革新による投入資源の削減
  • 改善による付加価値額の増加
  • 革新による付加価値額の増加

日本では、特に革新つまりイノベーションのアプローチの意識が低いと著者は説きます。

そして、このイノベーションには2つの要素が不可欠とおっしゃっています。

一つは、「イノベーションのための時間的余裕」です。業務の削減や単純作業の機械化など常に生産性を意識することで、イノベーションに使える時間を向上的に増やすことです。

次に、「イノベーションのためのモチベーション」です。こちらのほうが個人的にはなるほど!という感じでした。 これは、社員に問題意識とそれを解決する強い動機を持たせるということですが、そのために必要なのは乗り越えるのが困難な制約を設けることと筆者は述べています。

人は乗り越えるべき制約がないと何かを根本から変えるような考えに至らない。だから一見無理にも思えるような制約を課すことで圧倒的な効果を生むアイデアが生まれるようになるとのことです。

確かに、僕の会社でもイノベーションを起こしている人は、はじめに上司から「今のコストを半分にしろ」とか「売上を一桁増やせ」とか言われたなどと聞くことが多いように感じます。

それを見ていていつも思いますのは、上司の与える制約が絶妙なラインだということです。はじめは、絶対無理だと誰もが思うのですが、なんとかギリギリ達成できる結果となっています。

量から質へ

生産性を向上させるためには、量から質への思考の転換が必要と著者は説きます。

何かの問題を解決する際に、量ではなく、質をコントロールして解決する必要があるということです。

例えば、残業時間が問題になっている場合(2017年4月現在、とてもホットな話題ですが)、「残業時間を○○に減らしましょう」という解決方針は量をコントロールしているに過ぎず、根本的な解決にならないという話です。

残業時間を制限するだけでは、当然業務量は変わりませんので、どう考えても残業時間にカウントされない帰宅後の仕事の持ち帰りは目に見えています。 そうではなく、次に一部紹介するような生産性の向上を意識して残業を減らす方針をベースとする必要があります。

では何をどう実践するのがよいか

本書の後半は、生産性を向上させるための実践的なノウハウの紹介となります。 ここでは、一部を紹介したいと思います。

一つ目は、業務仕分けによる不要な仕事の廃止です。 業務は時間の経過とともに不要になることがあります。このような業務を定期的に洗い出し、やめる判断をすることが重要であるとおっしゃっています。なぜなら、これは効果が大きく、大抵の場合ノーコストですぐに効果が出るからです。

僕自身もこの重要性を経験しました。長らく運用されている業務に自分が新たなリーダとして加わった時に、チームの労働時間の多さが気になりました。もともとチームに居るメンバは自分のタスクの必要性や重要度を忘れてしまっていたり、変化していることに気がついていなかったりします。とにかくあらゆる既存タスクについて「なぜこれをやっているのか」ということをやっている本人と確認し、不要なものをやめることでチームの労働時間は適正化されました。成果は何も変わらないため、生産性が向上したと言えるかと思います。

逆に不要業務の廃止やその判断ができないリーダのチームは、概して労働負荷が高く疲弊しがちです。中にはその忙しさにご満悦なリーダさえいます。非常に危険ですね。僕自身は、リーダとしては常に心がけたいことの一つです。

二つ目は、ブランク資料です。 ブランク資料とは、上司や顧客にアウトプットする資料を初期段階で目次や資料のアウトプットイメージを実際に作ってしまって上司や顧客と認識を合わせるための資料のことだそうです。著者いわくコンサルティングファームでは一般的な言葉らしいです。

言葉は初めて聞きましたが、このプロセスは、僕も現職で非常に重要であると気が付きました。特に意思決定を目的とする資料に関しては、これは必須と言っても過言ではないと考えています。
初めから一人で最終的なアウトプットを作ろうとする人は、上司や顧客と最後の最後で前提やキーポイントがずれていて「やり直し」となるのをよく見かけますし、自分もたまにあります。最悪の場合、資料の1ページ目から「全然違う!」と上司に一括されて無駄になるケースすらあります。

資料作りに時間がかかると言っている人は、これをしない方が多い気がします。ただ、会社や組織の風土的にそれができないと少しつらいですね。例えば、「出来上がっていないものを俺のところに持ってくるな」みたいなことを言う上司だったりと言うパターンです。まさに質で評価できない方でしょうか。

他にも以下のような内容が紹介されており、生産性向上のために非常に実践的でためになります。
ぜひ買って読んでいただきたいと思います。

  • トップパフォーマーの育成
  • お荷物になりがちな中高年の育成
  • 管理職のチームマネジメント
  • 有効な研修
  • 会議の進め方

こんな方にオススメ

最後に、本書を特にオススメしてみたい方とその理由を書きます。

良書なので、すべてのビジネスパーソンにオススメですが、特に次のような方に良いのではと個人的には思います。

  • 新入社員
  • 育児とのバランスが必要な方

新入社員にオススメの理由は、この内容は裏を返せばみなさんが入った会社の先輩方は生産性への意識が低い可能性が高く、本書を読むことで、

  • そんな彼らが作ってきた仕事の課題を発見かつ解決できる
  • 彼らより生産性の高い成果を上げることができる

と考えるからです。
ほぼ間違いなく新入社員はシニアやベテランに経験値では負けるので、勝負するポイントとして良いかと思います。

次に、育児とのバランスが必要な方へおすすめする理由は、まぁこれは言わずともわかるかと思いますが、生産性を上げてとにかく家庭での時間を確保するためです。

実は、僕自身も、この春から妻が仕事に復帰し、保育園のお迎えや家事などを行う時間を確保する必要があります。冒頭にも述べましたが、行政に頼るだけでなく自分自身で課題を解決する必要があると思っています。
はっきり言ってこれまで生産性を意識していたかというとお世辞にもそうは言えないので、これを契機に自分や自組織の仕事を見つめ直しつつ生産性の向上を図っていきたいと思っています。同じような状況のみなさんも共に頑張っていければと思い、本書をオススメしたいと思います。

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

参考:その他マッキンゼー出身の方が書かれたビジネス書

冒頭に述べました、僕がよかったと思ったビジネス書で、マッキンゼー出身の方が書かれたものをリンクしておきます。

こちらもぜひ読んでみてください!

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