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時の最果て

書籍や読書に関する情報を紹介します

書評『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』

本日は、「エピジェネティクス」という遺伝子関連のテーマについてかかれた書籍
『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』
について紹介したいと思います。

昨今、DNAという言葉と聞いたことがない人はほぼいないかと思いますが、 DNAは生物の設計図と呼ばれ、生物を形成する根源的な情報です。

そして、そのDNAは、遺伝子から構成されます。
遺伝子は、タンパク質の構成要素であるアミノ酸の並びを記録した物質のことです。
この並びの違いがタンパク質の性質、つまり働きの違いを生みます。

DNAの遺伝子からタンパク質が作られ、そのタンパク質が働くことが生命活動そのものです。
体を形づくるのも、病気になるのも、ミクロな世界ではそういうことが起きています。

このタンパク質の生成を「遺伝子の発現」と言います。

従来、生物の形質は遺伝子により絶対的に決定されるという考え方でした。
つまり、同じ遺伝子なら同じ形質を生む、という考え方です。

しかし、実際はこれは誤った見方であると筆者は述べています。
その理由は、遺伝子の発現の有無は不変ではなく様々な条件で変わる可能性があり、
かつ発現は二値的ではなく表現の程度があるから
、とのことです。

これを「エピジェネティクス」と言うそうです。本文を引用しますと、エピジェネティクスとは、

1世代のあいだに遺伝形質がどのように変化し、変化させられるか、さらにはその変化がどのようにして次の世代に引き継がれるかを研究する学問

と述べられています。

非常に興味深いテーマだと思いませんか!

DNAが同じでも形質が異なるというわかりやすい例が紹介されています。

女王蜂と働き蜂

実は、女王蜂とメスの働き蜂のDNAは全く同じになります。
(ちなみに、これは半倍数性という特殊は生殖の昆虫ゆえです。興味のある方は調べてみてください。)

では、なにでどちらになるか決まってくるのか。 それはずばり食べ物の違いです!
コロニーに女王蜂が必要になると特定の幼虫にはローヤルゼリーが与えられ、女王蜂になるそうです。
これは、ローヤルゼリーの摂取により特定遺伝子の発現に変化が起きるためです。

DNAは同じですが、見た目も行動も全く違う生物になります。
普通遺伝的に異なる生物だと思ってしまいますよね。

みんな突然変異を抱えている

本文より

実際、最近ぼくが関与したある研究プロジェクトでも、こんなことがあった。遺伝子的な基準値を作成する目的で「健康である」とみなした人たちすべての遺伝子配列に。それまで健康的だと考えられていた配列と一致しない何らかのタイプの異変が必ず見つかったのだ。

人はみな何かしらの遺伝子的異変を抱えているということを筆者自身の体験で紹介しています。

筆者は、富士山に登った際に低圧低酸素環境における高山病にかかり、自身がそれになりやすい体質と知ったとのこと。
標高の高い地域で生活するのに適した遺伝子を持たない人は、筆者のようになる恐れがあると述べます。

では、これをエピジェネティクスで克服するためには、
実際に高地で暮らすことで時間をかけて順応するための遺伝子の発現を調整するなどができるといっています。
エリスロポエチンという赤血球の働きを活性化するホルモンは、
骨髄の細胞を刺激して赤血球を増産したり、血液中の赤血球の寿命を伸ばしたりするらしいです。 エリスロポエチンを発現する遺伝子を活性化させることで高地での生活への適用性が高まると述べています。

また、環境への適用という意味では違和感はないですね。

手っ取り早くは、薬で調整するという方法もあるとも述べています。

また、ここでは割愛しますが、驚くことに遺伝子の発現の調整は、次世代に引き継がれることも本書では紹介されています。

遺伝子の突然変異を知る

今は、遺伝子検査などで自分の遺伝子の特徴がわかります。
よって、自分が遺伝的にどういう特徴をもち、何を気にしていれば良いのかを知ることができます。

また、遺伝子検査などしなくとも、遺伝的特徴は外見に現れやすいと、筆者は述べます。
ディスモルフォロジーという外見から遺伝的特徴を知る学問があるらしいです。筆者はこちらもご専門のようですね。

このように、遺伝子を絶対的な運命と受け取るのではなく、環境や行動などの後天的要素で遺伝の影響を変化させることができるというのが本書の主な内容でした。

全体的に、特異な遺伝子による様々な影響も持った人の紹介や上記のディスモルフォロジーの話が多かったように思います。
ではそれをどう変えていくのかというエピジェネティクスの内容が若干少なく感じました。 タイトルからはそこを期待してしまうのでやや残念ですが、十分に興味深い内容でした。 興味が湧いた方、元々興味のある方は、是非買って読んでみてください。

そして、訳者あとがきに筆者の次作 “DNA Restart"が少しだけ紹介されています。
翻訳刊行が待ち遠しいですね!下記は原著です。

The DNA Restart: Unlock Your Personal Genetic Code to Eat for Your Genes, Lose Weight, and Reverse Aging

The DNA Restart: Unlock Your Personal Genetic Code to Eat for Your Genes, Lose Weight, and Reverse Aging