書評 『観察力を磨く 名画読解』
僕は、カフェや電車の中などで目に入る人の職業とか話している2人の関係を観察しながら推察するのが子供の頃から好きです。
探偵ものなどで指のタコなどを見つけて「あなたの職業は○○ですね。」などといったシーンに非常に憧れます。
本日紹介する本は、そのようないわゆる洞察力をどのように磨き、プライベートや仕事にどのように役立てるかを解説した 『観察力を磨く 名画読解』です。

- 作者: エイミー・E・ハーマン,岡本由香子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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はじめは、絵画の解説本かと思い手にとりましたが、主題は全然違いました。
著者は、本書を通じて「知覚の技法」と言うものを教えてくれます。
冒頭「始まり」の章で次のように述べています。
本書の目的は、目という驚異のコンピュータを使って、情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力を向上させることだ。しかもこの本は、読むと同時に体験できる。睡蓮や、ぴったりしたドレスを着た女性や、全裸の女性の助けを借りて、大きな概念を具体的事象と結びつけ、五感から入る情報を統合し、正確かつ客観的に他者に伝える方法を学ぶことができる。
このスキルが上達すると仕事も日々の生活もより良くなると僕は思っています。
仕事は言わずもがな、他人ができなかった発見が新しいビジネスやサービスの向上、競争優位性などにつながりますよね。
そしてこの「知覚の技法」は、以下の4つから構成されると著者は述べています。
章立てもこれに準じています。
- 観察(Assess):生まれながらにもつ盲点を知り、効果的かつ客観的にものをみる
- 分析(Analyze):集めた情報に優先順位をつけて、パターンを見つめて、事実と憶測を区別する
- 伝達(Articulate):発見したことを言葉にし、効果的に伝える
- 応用(Adapt):現実社会の中での上3つを実践する
そして、観察、分析、伝達を向上させるために「アート」の活用が非常に良いと書かれています。
その理由は、「アートには答えがあるから」ということです。
たしかに、答えがないと練習してもフィードバックが難しいですからね。
本書では、随所に絵や写真を交えて演習や解説があるので非常にイメージしやすく、楽しんで読むことができます。
同時に「知覚の技法」の難しさを実感しながら読むことができ、
次第にその重要性や有用性への理解と実感が深まっていきます。
ここでは、本書の「観察」の内容を少し紹介したいと思います。
知覚フィルター
個人にはそれぞれの潜在的な知覚フィルターが存在すると書かれています。
なので、同じものを見ても捉え方が異なってくる、ということです。
観察においては、自分の知覚フィルターの傾向を知ることも重要だし、
他人がどのような知覚フィルターを持っているかを知っておくことも重要であると筆者は述べています。
そして、自分の知覚フィルターを知ることで、それを意識すことができ、抑止や排除が可能となります。
では、知覚フィルターとは具体的にどういうものか。それはまぁ、人それぞれなのですが、
よくある知覚フィルターの特徴として本書では3つ挙げられています。
1. 見たいものを見る
一つ目は、主観によるフィルターです。
最近ハマっているものや学んだものなどはやはり目につきやすくなります。
この習性を認識しておくことで観察の偏りを修正できると述べています。
確認する方法としては、
- 自分の予想と一致する情報ばかり収集していないか
- 集めた情報により自分が得をすることがないか
という確認ポイントが提示されています。
なるほど、という感じですね。自分にも思い当たるフシがだいぶあります。。
2. 見ろと言われたものを見る
外部情報によるバイアスから生じるフィルターです。
例えば、絵画の場合は、タイトルや解説などがそれに当たると紹介されています。
当然、その内容やイメージに寄った見方をしてしまいますね。
まずは、そういった外部情報を遮断して事象の観察をすることが重要だと説きます。
その上で2回目は外部情報をふまえて再度観察することが重要とのことです。
3. 変化に気づけない
最後は、変化を前提としないことによるフィルターです。
物事は当然変化します。
ですが一度見たものは、前に見た、という意識から変化に気づきにくくなる傾向があるそうです。
確かに変化に気がつくことは非常に重要です。
私自身このフィルターが強い気がします。細かい変化に特に気が付きにくいタイプです。
いずれも、言われてみれば割りと当たり前なことで意外性はありませんが、
確かに無意識下でどのフィルターもかかっていることは納得できます。
以上、「観察」の章からの紹介ですが、これ以外にも観察の重要なポイントが多く述べられています。
さらに、「分析」「伝達」「応用」についても、その技法が丁寧に紹介されていて、大変勉強になります。
内容が濃いので、いきなりすべてをできるようにはならないですが、
少なくともこの本を読んで、ものを見る目は誰もが変わると思います。
生きていく上で非常に重要なスキルが身につく一冊ですので
是非読んでみてください!

- 作者: エイミー・E・ハーマン,岡本由香子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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